ホルムアルデヒドが気道上皮のサイトカイン産生に及ぼす影響についてin vitroにおいて検討した。手術時に採取した鼻茸を材料に上皮細胞をコラーゲン付着プレート上でホルモン添加無血清培養液中で培養し、confluentになった時点で各濃度のホルムアルデヒドを添加しサイトカインIL-8およびGM-CSF量をELISA法にて測定した。同時に上皮細胞の形態学的変化を電子顕微鏡において観察した。 形態的に上皮細胞にはホルムアルデヒド濃度10μg/mlにおいて核クロマチン濃度の減少や細胞質の空砲化等の変化が認められた。すなわち同濃度においてホルムアルデヒドは上皮細胞に対し細胞障害性に作用した。また上皮細胞から産生されるサイトカインGM-CSF量はコントロールと比してホルムアルデヒド濃度1.0μg/mlで有意に増加し、さらに10μg/mlで有意に減少した。しかしIL-8ではそのような変化を認めなかった。 最近になり気道上皮細胞が各種のサイトカインを産生する事が確認されており、上皮細胞のeffector cellとしての機能が注目されている。GM-CSFは好酸球の産生や浸潤に関与することでアレルギー反応に強く関わっていることが証明されており、今回の実験結果より、non-toxicな範囲(10μg/ml)においてホルムアルデヒドは培養気道上皮を刺激しGM-CSF産生を亢進させる事が確認された。このことはホルムアルデヒドが気道のアレルギー性疾患の発現や遷延化に影響を及ぼすことを示唆させた。
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