われわれのこれまでの研究から、末梢における吃音症状発生の主体は、声帯レベルでの機能異常によるものの可能性が強いことが推測されている。本研究は、吃音発生時の声門レベルの異常に焦点をて、低周波干渉電流が吃音発生の抑制に関与するかを検討することを目的としている。低周波干渉電流刺激療法が、理学療法の分野では末梢神経の伝導抑制作用を示し、その作用を利用して消炎・鎮痛療法があることは広く認められている。また、低周波による神経刺激実験で50Hz以上の電流が鎮痙的作用があることも知られている。3例の成人吃音患者を対象としたが、発話時のBlockと、身体の随伴症状が最も著しかった1例を対象に、上肢に電極を装着して電流刺激をした場合と、咽頭に電極を装着して電流刺激をした場合と、電流を流さない状態とで、文章音読時の吃音症状出現頻度について検討した。電流刺激装置は日本メデックス社の低周波刺激装置を用いた。咽頭への電流刺激方法は、星状神経節ブロック施行時の要領で行い、50-60Hz、5-10mAの電流を流した。また、distraction効果についても検討した。その結果、咽頭への電流刺激が吃音症状軽減に有効であることが示唆された。 干渉低周波刺激電流は、声帯に物理的な刺激を加えるが、声帯の器質的な変化を惹起させることなく、繰り返し利用可能であるので、吃音者が吃音を予測した時に電流をを刺激するすることにより、吃音症状軽減効果が期待できる。
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