研究概要 |
匂い輸送蛋白(odorant-bindiog protein:OBP)に関する研究で得られた成果は以下の通りである. 1) ラットにおいてOBPl,OBP2は異なった発現様式を示す.OBPlは鼻中隔、鼻腔側壁の特に鼻前庭に開口する分泌腺に発現するのに対し、OBP2は一部OBP1と共通した分泌腺でも発現がみられるものの、鋤骨器に関係した分泌腺に強く発現するという違いがみられた.この結果からOBP2はフェロモンの輸送に関与するのではないかという仮説が立てられた. 2) 視覚、聴寛の未発達な生直後のマウスにとって嗅覚は生命を支える重要な感覚である.我々のノザン解析の結果OBP1がこうした生直後の段階からその発現が認められたことは、OBP1が嗅覚受容の構成するメンバーとしての資格を裏付けるものと捉えられた. 3) RT-PCRを用いた実験ではヒト鼻組織にはラットOBPと相同性の高い遺伝子の発現は認められなかった.この結果から種の違いによって機能しているOBP蛋白が違うのではないかと思われた. 4) 種の近いマウスとラットの間ではOBP1遺伝子が共通して鼻粘膜の分泌腺に発現していることを明らかにした.しかし、ラットOBP2遺伝子のホモログはRT-PCRを用いた検討でマウス鼻組織には検出できず、種の僅かな違いによっても機能するOBPの構成が違うことが推察された. 5) マウス鼻組織にはその構造からOBPファミリーに属すると考えられる蛋白、Major urinary protein(MUP)遺伝子が発現していることを明らかにした.MUP遺伝子は鼻中隔、鼻腔側壁の分泌腺にOBP1と類似した発現パターンを示し、その発現様式からフエロモンの輸送のみならず一般の匂い分子の受容機構にも関与しているのではないかと考えられた.
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