研究概要 |
ヒト口蓋扁桃が抗原特異的免疫応答の誘導部位さらには実効部位として機能しているかどうかについて、純系マウスやミニブタを用いた動物実験やヒトロ蓋扁桃リンパ球を受動移入したNOD-scidマウスでの免疫実験系を用いて、詳細な検討を加えた。(1)系統発生の点からみると、マウスには鼻咽頭管外側に前後に伸びるリンパ球集簇が存在し、ミニブタでは軟口蓋正中縫線の両側に扁桃組織が存在した。ヒトWaldeyer扁桃輪に相当すると考えられるこれらのマウスならびにミニブタ扁桃組織の形態学的特徴として、ヒトロ蓋扁桃組織と同様に、陰窩を有し、扁平上皮(ミニブタ)もしくは繊毛上皮(マウス)で被われ、実質内にリンパ瀘胞さらに胚中心が存在した。さらに免疫組織化学的検討より、瀘胞内外でのB細胞(IgM,IgG,IgA-陽性細胞)領域や瀘胞間のT細胞領域が存在していた。種々の系統のマウスを用いた検討では、いわゆるNasopharyngeal lymphoreticular tissue(NALT)が粘膜免疫の誘導部位として機能し、鼻咽腔粘膜が実効組織として機能していることが示された。さらにヒトロ蓋扁桃リンパ球を受動移入したNOD-scidマウスを用いた鼻局所感作の実験より、ヒトロ蓋扁桃に存在するBリンパ球やTリンパ球が共通粘膜免疫系の実効組織にホーミングし、抗原特異的免疫応答を誘導しうることが示唆された。すなわちヒトロ蓋扁桃が粘膜免疫応答の誘導部位になっていることがin vivoにおいて証明された。現在、外界からの免疫学的修飾の加わっていないSPF飼育の純系ミニブタを実験に用いて、経口免疫さらには扁桃組織に直接抗原刺激を加えた場合の、全身ならびに鼻咽喉粘膜での免疫応答につき、さらに検討を重ねている状況である。
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