研究概要 |
本年度は研究計画に従い、まず、モルモットを利用して、ゲンタシンを鼓室内に投与し、内耳障害モデルを作製した。この動物を使用して、最初に細胞骨格構造の面から耳毒性薬剤投与による細胞障害様式を細胞骨格レベルで検討した結果、耳毒性薬剤による細胞骨格の障害は比較的早期にミトコンドリアの障害が起こる前後に独立して生じ、この細胞骨格の障害の進行がゴルジ装置、小胞体、等の他の細胞内膜性小器官の変性を引き起こすことが明らかとなった。また、耳石のカルシウム代謝に関して、テトラサイクリン、カルセイン、アリザリンコンプレクソンにより耳石のカルシウム(Ca)を標識することが可能となり、正常動物、内耳障害モデル動物での耳石のCa代謝について検討を行った結果、正常動物においても耳石の表面でCaは常に交換されており、耳石が内リンパのCaの恒常性の維持に関連していること、耳毒性薬剤の投与により耳石のCa代謝が障害され、耳石の減少、巨大耳石の出現を引き起こすこと、さらにこのような障害は薬剤投与中止後10週までには回復することが明らかとなった。また、正常若年動物ならびに老齢動物において、耳石の構成元素の定量的分析を行った結果、老齢動物では耳石のCa量が減少していることがX線マイクロアナライザーによる検討で明らかとなった。 これらの結果はSENDAI SYMPOSIUM'96,第5回日本耳科学会、第55回日本平衡神経科学会で報告するとともに、6編の論文にまとめた。
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