神経栄養因子であるNT-3、BDNF、成長因子であるEGF、TGF-alpha、成長因子レセプターとしてFGFレセプター、PDGFレセプター等の存在の有無を、マウス胎児内耳、ヒト胎児内耳の発生段階及び成マウス内耳、成鶏内耳において免疫組織学的に検討した。その結果、マウス胎児内耳及びヒト胎児内耳では、一部を除きほとんどの各種成長因子及び成長因子レセプターは発生早期に認められるが、発生とともに認められなくなった。一方、成鶏内耳においては、免疫組織学的に各種成長因子及び成長因子レセプターを同定し得た。このことは、成マウス内耳と成鶏内耳における内耳感覚細胞の再生能力の著しい差の原因となっていることが推定された。 また、内耳における成長因子及び成長因子レセプターの新しい同定方法として、共焦点レーザー顕微鏡を用いる方法を確立した。卵形嚢や蝸牛のwhole mount標本をそのまま抗体に反応させ、成長因子及び成長因子レセプターの局在を共焦点レーザー顕微鏡にて確認する方法をもちいると、標本処理中に抗原性が消失するのを防ぐばかりでなく、立体的に局在の位置関係を同定することが可能となった。この方法を用いて、内耳障害前後の成長因子または成長因子レセプターの発現の変化を、全体的に把握するとともに局在の部位の同定を同時に行うことが可能となった。 平成9年度は、以上の方法を用いて傷害された内耳における各種成長因子または成長因子レセプターの局在の変化を検討する予定である。また、成長因子の局所投与についても効果判定に共焦点レーザー顕微鏡を用い検討する予定である。
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