研究概要 |
1.障害マウス卵形襄におけるFGFレセプターの発現 蝸牛において、音響障害後にFGFレセプターが発現することが知られている(Privola et al.,1995)。神経終末から成長因子が放出され、感覚細胞に成長因子レセプターが発現することにより、内耳の可塑性に関与していることが推定されている。 今回、マウス卵形襄を硫酸ストレプトマイシンにて障害し、卵形襄を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。FGFレセプターとneurofilamentによる二重染色を行った結果、障害された卵形襄において、神経終末にFGFレセプターを認めた。この結果は、シナプスの可塑性の含めた卵形襄における修復機転に、FGFが関与していることが推定された。 障害マウス卵形襄におけるNCAM及びsynaptophysinの発現 NCAM及びsynaptophysinは、シナプスの可塑性に関与していることが知られている。内耳の発生において、synaptophysinは蝸牛遠心性終末の形成に関与していることが報告されている(knipper et al.,1995)。また、NCAMも発生段階においては、内耳神経及び神経終末に存在し、内耳神経の発生に関与している。 共焦点レーザー顕微鏡において、障害マウス卵形襄におけるNCAM及びsynaptophysinの発現を検討した。NCAMは、障害された卵形襄の神経終末に発現した。synaptophysin陽性神経終末が、障害後に多く認められた。これらの結果は、哺乳動物末梢前庭器におけるシナプスの可塑性を示唆しており、内耳の機能回復に関する重要な示唆を与える所見と考えた。
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