1.ヒト胎児内耳における成長因子及び成長因子レセプターについて ヒト胎児内耳を用い、成長因子及び成長因子レセプターに同定を試みた。成長因子としてEGF、TGF-αを、また、これに対応するEGFレセプターを同定した。この結果、ヒト内耳の発生とともに、これらの発現が減少した。この結果は、成鳥においてもこれら因子及びレセプターが認められる所見と異なっており、ヒトと鳥類の内耳感覚細胞の再生能力の差になっているものと推定された。 2.内耳における成長因子レセプターの同定方-共焦点レーザー顕微鏡を用いて- whole mountのマウス卵形嚢やモルモットの蝸牛の二重染色を施行し、共焦点レーザー顕微鏡による観察を行った。この穂魚方の利点として、1)固定時間が短い(抗原生の保持)、2)熱処理を加えない(抗原生の保持)、3)二重染色によりレセプターの発煙した部位の同定が可能(局在の同定)、などが挙げられる。 3.障害マウスの卵形嚢におけるFGFレセプターの発現 マウス卵形嚢を硫酸ストレプトマイシンにて障害し、卵形嚢を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。FGFレセプターとneurofilamentによる二重染色を行った結果、障害された卵形嚢において、神経終末にFGFレセプターを認めた。この結果は、シナプスの可塑性の含めた卵形嚢における修復機転に、FGFが関与していることが推定された。 4.障害マウスの卵形嚢におけるNCAM及びsynaptophysinの発現 共焦点レーザー顕微鏡において、障害マウス卵形嚢におけるNCAM及びsynaptophysinの発現を検討した。NCAMは、障害された卵形嚢の神経終末に発現した。synaptophysin陽性神経終末が、障害後に多く認められた。これらの結果は、哺乳動物末梢前庭器におけるシナプスの可塑性を示唆しており、内耳の機能回復に関する重要な示唆を与える所見と考えた。
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