分子生物学的なアプローチを用いて、内リンパ襄におけるホルモンレセプター遺伝子の発現を検討した。SD系もしくはウィスター系の成熟ラットの内リンパ襄からCs TFA超遠心法にてtotal RNAを精製し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した。 次にバゾプレッシンV1a・V1b・V2レセプター、ANP-Aレセプター、ANP-Bレセプター、アルドステロンレセプターの遺伝子に特異的なプライマーを合成し、これを用いてcDNAのPCR増幅を行った。アガロースゲル上でDNAのバンドを確認し、これをサブクローニング、塩基配列を決定した。PCR増幅にて、発現が確認できたレセプターに関しては、それぞれの遺伝子の塩基配列に相補的なジゴキシゲニン、もしくは35S標識のRNAプローブを合成した。次に、それぞれのプローブについて、ラット内リンパ襄の凍結切片を用いてin situハイブリダイゼーションを施行した。 PCR増幅では内リンパ襄から、アルドステロンレセプター、バゾプレッシンV1aレセプター、ANP-Aレセプターが検出されたが、V1b・V2レセプター、ANP-Bレセプターは検出されなかった。in situハイブリダイゼーションではアルドステロンレセプターのみ検出され、内リンパ襄の中間部上皮細胞に発現していた。 今回の結果から、アルドステロンは内リンパ液の吸収の調節に関与していることを示唆しているものと考えられる。
|