研究概要 |
急性骨髄性白血病に対してVitaminAであるAll trans retinotic acid(ATRA)を用いた分化誘導療法の有用性が観察されている.固形腫瘍に対しても,precancerous conditionからcarcinomaへの進行を停止する事実が判明しつつある.前癌状態から癌化の抑制が認められていることから,ATRAなどの分化誘導作用をもつ薬剤が,癌の新しい治療法として注目されている.今回我々はvisnarion,pamidronate disodium,ATRA,VitaminD3誘導体である22-oxacalcitriol(OCT),1α-25(OH)2D3を用いてヒト由来頭頸部扁平上皮癌培養細胞に作用させ,各薬剤の細胞増殖抑制効果を検討した.また,化学療法剤感受性なども合わせて検討した. 全ての薬剤で濃度依存性に細胞増殖抑制効果が認められた.VitaminD3誘導体のうち,1α,25(OH)2D3よりOCTの方が強いDNA合成抑制効果を示した.OTCとATRAを併用して,それぞれ単独処理群との効果を比較すると,併用群の方がさらにDNA合成を抑制する傾向にあった.CDDP処理ではATRA,vesnarinone処理群で,有意にIC50の低下を認めた.形態学的には,ATRAとoctの処理によって,細胞が樹状突起を伸ばし,大型になっていた. 頭頸部扁平上皮癌はこうした薬剤による増殖抑制効果が期待でき,今後その効果発現におけるreceptoの解明さらに臨床での投与法,投与量の検討が必要と考えられる.
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