滲出性中耳炎は、近年小児期における本疾患の増加が問題とされる代表的な耳鼻咽喉科疾患である。一般に中耳貯留液よりはHaemophilus influenzae、Moraxella catarrharis、Streptococcus pneumoniaeが分離検出されると報告されているが、これらの細菌が中耳貯留液より分離されることは少なく、本疾患における細菌検索は十分に行われているとはいえない。われわれはこれらの細菌にたいするPCRプローベを作成し、滲出性中耳炎患者中耳貯留液内の細菌検出に応用、細菌感染の滲出性中耳炎への関与を検討した。 滲出性中耳炎中耳貯留液内のH.infouenzae、M.catarrharisの検索をPCR法にて行った。その結果、中耳貯留液中の67%にてH.influenzaeが、26%にM.catarrharisが検出された。この検出率は、従来の細菌培養による検出率に比較してはるかに高いものであった。さらにPCR法による細菌検出と中耳貯留液の肉眼的症状につき比較検討したところ、mucoid貯留液においてserous貯留液に比較して有為に高くこれらの細菌が検出された。臨床経過との比較検討では、頻回の鼓膜切開を要した難治性例においてPCR法にてH.influenzae、M.catarrharisが高率に検出された。現在、滲出性中耳炎貯留液を経時的に採取し、中耳貯留液内細菌の検出を経時的に行っている。 また近年薬剤耐性化が問題とされるS.pneumoniaeに関して、ペニシリン結合蛋白遺伝子の検出に基づく耐性化の検索をPCR法にて行っている。本法により、急性中耳炎患児鼻咽腔より分離されたS.pneumoniaeの約40%に薬剤耐性菌が検出された。
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