研究概要 |
経過観察中の神経線維腫症2型(NF2)症例について,遺伝子異常の有無・程度を検索し,臨床症状との比較・検討を行った。また,手術を施行した症例では手術時に採取した腫瘍組織からNF2遺伝子を抽出し,同様の検索を行った。 対象例より末梢血を採取しEDTAにて溶血,遠心分離,SDS付加インキュベート後,フェノール・クロロホルム抽出,エタノール沈澱により高分子DNAを抽出した。各症例のゲノムDNAをエクソン11の両側のイントロンに対応するプライマーを用いてPCRで増幅した。エクソン11を含むPCR産物の2本鎖DNAを鋳型としてさらにPCRにて1本鎖DNAを得,DNA配列を決定した。 111例のNF2症例(73家系)で検討した結果,67例(56%)において36種の異なる種類の遺伝子変異を認め,疾患との関連を疑わせた。また,28例においてNF2タンパク(シュワノミン)の部分的欠損を起こす遺伝子変異を認め,それらのうちの24例が臨床的に重症例であった。さらに,67例中の16例において1個のみのアミノ酸変異を生じており,これらの症例は臨床的には軽症あるいは中等症であることが判明した。 一方,両側聴神経腫瘍が診断され,MRI画像によって聴神経以外の部位にも神経線維腫が生じている症例(1症例)において,気道狭窄予防の目的で喉頭に存在する腫瘍を摘出し,標本から得た試料を-80℃に急速凍結・保存。PCR法を用いてNF2遺伝子の検出を試みた結果,現時点で明確なNF2遺伝子変異の同定はなし得ていない。手術症例については今後も,症例数をさらに増して検討を行う必要があると考える。
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