臨床的研究として聴神経腫瘍における耳鳴の自覚的検査および他覚的検査所見、特に内耳障害の他覚的検査法として注目されている耳音響放射所見について検討した。その術前、術後の変化を観察し、その他の原因による内耳性難聴に伴う耳鳴症例の耳音響放射所見と比較検討した。その結果、聴神経腫瘍では後迷路性難聴を示す症例で中等度〜高度難聴にもかかわらず耳音響放射が検出できたが、内耳性難聴を示す症例での耳音響放射検出は低率であった。また、耳鳴と耳音響放射所見との間には明確な関係は認められなかった。聴神経腫瘍の耳鳴と耳音響放射との関係の検討には、耳音響放射測定法の改良が必要であると考えられ、現在新しい測定システムを考案し検査を行っている。 基礎的研究としては聴神経腫瘍のモデル動物を作製し、その内耳、蝸牛神経障害と耳音響放射所見との関連についての基礎的実験を行った。聴神経腫瘍モデル動物として、実験的内耳障害モルモット、および実験的蝸牛神経障害モルモットの耳音響放射(誘発、歪成分)を測定し、比較検討した。内耳障害モデルでは耳音響放射の消失が顕著であり、障害作成直後より耳音響放射は消失した。しかし、蝸牛神経障害モデルでは難聴の程度より考えて耳音響放射の障害は軽微であり、耳音響放射が内耳障害を反映することが確認された。
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