臨床的研究 聴神経腫瘍症例における耳鳴の性状について詳細に検討した。聴力保存手術を施行された聴神経腫瘍85例において、術前術後の耳鳴につき聴力保存群と非保存群に分けて検討したが、耳鳴の有無、耳鳴の大きさの変化(増強、減弱、変化なし)、耳鳴の気になり方の変化に関して、聴力保存群と非保存群の間に明らかな差は認められなかった。また、耳鳴の気になり方の変化に関しては、個々の症例によってばらつきのある結果となったが、両群ともに術前術後をとおしてそれほど気にならない人が大部分であった。 聴神経腫瘍における耳鳴に対するリドカインの影響について、耳鳴の自覚的変化と歪成分耳音響放射の変化を経時的に観察たが、それぞれの変化は症例により様々で、一定の傾向は認めなかった。 基礎的研究 歪成分耳音響放射に対するリドカインの影響について検討し、リドカインは歪成分耳音響放射を一過性に抑制することが明らかとなった。また、単離外有毛細胞はリドカインにより収縮し、細胞内カルシウム濃度も上昇した。以上の結果より、リドカインによる末梢性の耳鳴抑制機序が明らかになったが、聴神経腫瘍モデル動物を用いた検討は現在進行中であり、明確な結果は得られていない。
|