研究概要 |
唾液腺症は非炎症性、非腫瘍性に両側唾液腺腫脹を示す疾患であるが、その成因、病態、治療法については未だ多くが未解決である。しばしば、神経性食欲不振症、無月経、卵巣機能不全に関連して発症するが、本研究ではこれらの唾液腺症患者の耳下腺組織について光顕並びに電顕的観察、抗アミラーゼ抗体を用いた免疫組織学的検討、分泌顆粒についてはPAM染色とレクチンによる糖鎖の検討を行った。また、卵巣を摘出したラットにおける顎下線組織の変化についても検討を行ない以下の結果を得た。 1.唾液腺症患者の耳下線組織は線房が腫大し、細胞質は淡染しやや空胞状に明るくみえる。正常腺房に比べ約1.5〜2倍の大きさで炎症細胞の浸潤は認められなかった。 2.正常腺房細胞電顕像は明るい基質の中に、高電子密度の芯を有する二相性顆粒を認め、一方唾液腺症ではほとんどは芯を欠如し、電子密度の低い均一な分泌顆粒が充満していた。 3.正常分泌顆粒で見られる芯にはアミラーゼ蛋白が局在することがこれまで報告されているが、芯を含まない唾液腺症の腺組織でアミラーゼ抗体による免疫染色を行なった結果、強く染色されることよりアミラーゼ合成が行われていることが示された。 4.電顕レベルでのPAM染色、レクチン-gold(WGA、UEA-I,RCA-I,ConA)染色を施行した結果、正常耳下腺では分泌顆粒の辺縁基質に全て陽性であり、芯は陰性であった。唾液腺症では分泌顆粒全体にほぼ均一に染色されたことより唾液腺症の分泌顆粒は正常者の顆粒辺縁部に類似していると考えられる。 5.卵巣摘出ラットの顎下腺の光顕レベルの形態学的検討では正常に比較して今回の検討では明らかな差異は認められなかった。
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