唾液腺疾患のうち口内乾燥をきたす疾患と非炎症性、非腫瘍性に唾液腺腫脹を示す疾患、細胞内に分泌顆粒を有する腺房細胞癌について組織化学、光顕および電顕的に検討した。 1.口内乾燥症を示すシェーグレン症候群耳下腺と加齢による正常耳下腺組織の変化について腺実質、脂肪組織、導管、血管を組織学的に検討し、さらに各々の関係についてコンピュータによる三次元構築を行った。シェーグレン症候群耳下腺は腺実質の萎縮と筋上皮島が特徴であるが立体構築により筋上皮島は筋上皮細胞の集塊でなく連続性し変性した導管細胞の増殖より成ることが示された。加齢による耳下腺実質の残存率は男女共加齢と共に低下し、女性は年齢との相関が高かった。2.唾液腺症の耳下腺組織について電顕的に検討し、とくに分泌顆粒の形態とPAM染色、糖鎖を示すコロイド標識レクチンを用いた顆粒の性状について検討した.唾液腺症腺房は正常に比べ1.5〜2倍大きく、腺房細胞内分泌顆粒は正常でみられる芯を有する二相性顆粒は極めて少なく、二相性顆粒の形成障害が示された。糖鎖の検討より唾液腺症の顆粒は正常顆粒辺縁部に類似していた。抗アミラーゼ抗体による染色では正常、唾液腺症共陽性であることからアミラーゼ合成が行われていることが示された。3.唾液腺のlow gradeの悪性腫瘍である腺房細胞癌はその名称から正常腺房細胞に類似していることに起因している。腺房細胞癌の細胞内分泌顆粒の形態、性状について正常成人および胎生耳下線の分泌顆粒の発生と共に比較検討した。腺房細胞癌と胎生20週以前の耳下線の細胞内分泌顆粒は一相性でPAM染色、レクチン染色共類似していた。腺房細胞癌は未分化な細胞より腺房細胞への分化を行えず腫瘍化したものか、腺房細胞の腫瘍化即ち脱分化により胎児に類似した幼若な顆粒を形成したものと考えられた。
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