研究概要 |
前年度はモルモットを用い,5/6腎切除法を応用して慢性腎不全動物モデルを作製しその蝸牛機能に異常が発生する事,及び腎不全と雑音負荷の蝸牛機能異常発現に果たす相互作用を見出した。 今年度はモルモット,ラットを被検動物に用いて I)puromycin aminonucleoside(PAN)静注法 II)アデニン含有食食餌法 III)5/6腎切除法 の三法によって慢性腎不全を生起せしめ,各々の蝸牛機能に与える影響の相違を蝸電図学的(CM,CAP,EPの記録)に検討した。I)による高脂血症性腎障害の場合が蝸牛電気反応の異常変化は最も軽微であり III)による腎障害の場合が最も高度の蝸牛機能異常を起こす事が蝸電図学的に明らかになった。すなわちCAP,CMの閾値上昇,振幅減少,CAP潜時延長 等が著明であった。II)による場合はI)とIII)の中間の蝸牛機能障害を生ぜしめる事が推察された。しかしいずれの場合も少数例の記録であったがEPはほぼ正常範囲値をしめした。Cm,CAPに異常変化を来すにかかわらずEPがほぼ正常であったデータから蝸牛障害の主因は受容器細胞の機能異常であろうと推定した。 腎病態の相違と蝸電図変化との関連性については今だ明らかにし得ないでいるがI) II) III)の三つの手法による腎不全の相違によって蝸牛機能異常の程度に差異が生ずる事が蝸電図学的に推察された。勿論,腎機能の障害程度のファクターも考慮にいれねばならないので形態学的手法も加えて更に検討を続行中である。
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