研究概要 |
本研究は体壁振動の生理学的研究を行い、この分野での研究の発展に資することを目的とし、持続発声中の体壁振動について、身体各所における実効値と周波数構造の分析を行い、また口前音ならびに発声時体壁振動と口腔咽頭内圧を同時測定し、各母音、子音の構音機構の解析をめざした。その結果、周波数帯域別の振動パワーに関しては、男性被検者で母音の歌唱発声中に3KHz付近の帯域において高い振動パワーが身体各所で認められた。これは口音前でのSinging Formantと呼ばれる音響エネルギーの集合体に対応すると考えられ、それらの定量的計測を行った(未発表)。また、音響分析では囁語における母音のFormantと高さ(別刷3,5)ならびに咽頭拡大術前後における子音を中心とした構音の変化(別刷6)に関する新知見が得られた。一方、これらの結果をふまえ、さらに病的音声の臨床的評価ことに喉摘者(無喉頭者)における無喉頭音声(代用音声)への応用を考えた。まず喉摘者の現況を把握する目的で京阪地区の喉摘者971名を対象として、一般的なアンケート調査を実施し、その結果、喉摘者の高齢化と人工喉頭使用者の増加および食道発声習得者の減少を確認した(別刷1)。さらに、発声器官としての喉頭の形態学的評価にヘリカルCTによる3次元表示を応用し、その有用性と限界について知見を得た(別刷2,4)。
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