研究概要 |
[新しい知見]MRL/lprマウスは自己免疫性感音性難聴を示すが、このマウスのリンパ球の注入によって、聴力正常マウスに同様の疾患が移入できるかを検討した。 まず、MRL/lprマウスのリンパ球(脾細胞)を注射されたマウスにおいて、フローサイトメトリーにより、リンパ球がMRL/lprマウスのリンパ球に置き換わることが判明した。さらに、このマウスでは、ABRで感音性難聴が見られ、また、免疫組織化学的に血管条へのlgG沈着が認められ、MRL/lprマウスと同様な病態を示すことが明らかとなった。したがって、自己免疫性感音性難聴のマウスのリンパ球を注入することで、元来は聴力や蝸牛の正常なマウスに感音性難聴や蝸牛病変が移入できると考えられた。 [研究発表の概要]研究結果を平成8年の日本耳科学会で一部を発表するとともに、現在投稿準備中である。 [研究の展開]今回の実験では、免疫担当細胞(リンパ球)を用いたが、今後は、自己免疫担当細胞の元の細胞である骨髄細胞を移入し、同様の疾患の移入ができるかを検討したい。 さらに、早期老齢化および早期老人性難聴を示すSAMマウスの感音性難聴における免疫学的さらに自己免疫学的機序を検討中である。 また、内耳の免疫機構を検索するにあたり、ヒスタミンとモルモット前庭有毛細胞の関係を検討している(Tomoda K, et al, Acta Otolaryngol (Suppl)印刷中)。手術の際に得られたヒト前庭有毛細胞を用いて基礎的研究を行っている(Tomoda K, et al, J of Vestibular Research印刷中)。さらに、血管条と同様に基底膜が存在する半規管膨大部の荷電関門(charge barrier)について研究している(Suzuka Y, et al, Acta Otolaryngol (Suppl)印刷中)。
|