高齢難聴者にとって最適のデジタル信号処理法が選択できるようなシステムを作るのに先立って、高齢者の語音弁別能力低下の原因の一つである時間分解能の劣化を検査するシステムを作成した。 1)検査語表ならびに音声資料の作成 語音弁別における発話速度の影響を調べるために適した語表を作成した。日本語単音節をコンピュータでデジタル化し、単音節の語順をランダムにした語表、音声資料を作成した。4音節ずつデータをコンピュータで接続し、基準となる通常話声速度である1倍速の無意4音節単語音声資料を作成した。次いでデジタル信号処理による音声速度変換を行い、基準の1倍速に対し1.5倍、2倍ならびに0.8倍の速度の音声資料を作成した。 2)聴力正常者に対する聴取実験 作成した種々の発話速度の音声資料を用いて、種々の呈示音圧で聴力正常者による聴取実験を行い、スピーチオ-ジオグラムを作成した。本実験は防音室内でデジタルオ-ディオテープレコーダーとオ-ジオメータを用いて行った。聴力正常者の語音弁別能力が発話速度と音圧の関数として表現された。その結果早口では最高明瞭度が低下する傾向があること、また早口の聞き取り難さは音量である程度補償できることがわかった。
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