メニエール病(内リンパ水腫)の発症には従来自律神経の異常や精神的ストレスが重要な役割を持つといわれている。そこで、これらと内耳の関連を解明するために内耳液産生に密接に関与している血管条Na-K ATPase活性とカテコールアミンとの関係について酵素組織化学法で電子顕微鏡による検討をおこなった。この結果、つぎの3点が判明した。 1。内耳血管条Na-K ATPase活性は外因性のカテコールアミンに影響される。 2。このカテコールアミンの支配には両方向の支配がある。ドーパミンは内耳血管条Na-K ATPase活性を低下させるが他のカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)とセロトニンは内耳血管条Na-K ATPase活性を上昇させる。 3。レセルピン投与によってカテコールアミンを枯渇させると内耳血管条Na-K ATPase活性は消失する。いい替えれば、内耳血管条Na-K ATPase活性を維持するためにはカテコールアミンが必要である。 また、以上の内耳血管条Na-K ATPaseの結果について顔面神経のNa-K ATPase活性についても同様な実験を行なった。その結果、内耳血管条Na-K ATPase活性と違い、顔面神経のNa-K ATPase活性はレセルピン投与によってカテコールアミンを枯渇させても、その活性が低下しない部分もあることがわかり、カテコールアミンの無に関係のないTransport Na-K ATPaseがあることもわかった。 これらの結果を指標に内リンパ水腫の発生の有無を病理組織学的に検討した。
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