音声治療の適応基準を作成することを目的として、本研究では、音声治療の前後で喉頭筋電図検査、喉頭ストロボスコープ検査、音声機能検査、音響分析を施工し、喉頭および呼吸のどのような機能が関与して音声機能が改善するかを検討した。そのために、反回神経麻痺患者20例に対し、音声治療前に喉頭筋電図検査、喉頭ファイバーストロボ検査、音声検査、呼吸機能検査を行なった。 音声治療前の喉頭筋電図検査では、筋放電dischrgeの有無、frequency、amplitudeを検索した。この際、声門閉鎖訓練の代表的な音声治療であるPushing Methodを行わせて、喉頭筋電図でdischargeが増加するか否かを調べた。喉頭ファイバーストロボ検査では声帯運動の有無、声帯間隙の幅と形を検索した。 その結果、Pushing Methodを行わせた時に喉頭筋電図でdischargeが増加する症例は3例のみであった。また、実際にストロボスコープで観察しても、明らかに声門間隙が小さくなる症例は見あたらなかった。従来言われているほど、pushing methodは有効ではないと考えられる。さらに、平均3ヵ月間、アクセント法による音声治療を行った後に、同様の検査を行ったが、音響分析で改善の認められた症例はなかったし、喉頭ファイバーストロボ検査でも改善の認められた症例はなかった。すなわち、一側声帯麻痺に対しての音声治療は無意味かもしれない、という結果を得つつある。なお、ここ2〜3年、反回神経麻痺の患者が何故か激減し、症例が増えないのが最大の悩みとなっている。
|