フォスデューシンはトランスデューシンβγサブユニットと相互作用してcAMP依存性に光伝達機構を抑制するが、フォスデューシンは2次元電気泳動法や、ゲノミックサザンブロット法などにより、ファミリーを形成している可能性がある。今回は、ウシ網膜cDNAライブラリーよりフォスデューシンのアイソフォームをすクリーニングによりクローン化し、各臓器での発現を調べた。クローニングされたフォスデューシンはrat phosducin-like protein(RPhLP)と報告されたものと類似しており、BPhLPと推測されたが、RPhLPのアイソフォームの内、1つは網膜に特異的に発現していると考えられた。さらに、フォスデューシンのリン酸化部位である73番目のアミノ酸のセリンをイソロイシンに変異させアレスチンプロモーターを用いたトランスジェニックマウスを作成し解析した。これで判明したことは、電気生理学的にみて光刺激後の網膜伝図のB波の回復が、正常マウスに比較してやく50%の回復率であり、また明順応下での網膜伝図の回復の正常の約50%であることが判明した。これは、フォスデューシンが視細胞の順応に関与する蛋白質であることを推測させる結果であると思われた。免疫染色では、推測どうり、トランスジェニックマウスでは視細胞に強い染色が認められた。さらに組織検索を進めたが、トランスジェニックマウスでは初期には正常像を示すが、次第に視細胞外節の空胞化が出現し、視細胞の核もpyknosisを示した。さらに進行すると、外節は短くなり、外顆粒層は2〜3層となり、内節の遊離リボゾームも増加した。さらにフォスデューシンの免疫染色を眼内だけでなく脳を中心にその他の臓器まで適応してみると、脳内の一部の細胞群に、フォスデューシンとアレスチン、またごく微量のロドプシンが染色される部分があることが判明した。これらの細胞群はhabenula commissura amygdalaやsuperiorcolliculusであった。
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