目的:虚血網膜障害に重要な役割を為す細胞内カルシウム濃度を、網膜スライスモデルを使って測定する。 材料と方法:体重約150〜200gのSDラット眼球を用いた。リンガー液に10mMのグルコースと2%のアガロースを加え、加熱してアガロースを溶かす。95%O_2/5%CO_2を飽和させながら25℃まで冷却したものに新鮮な網膜を浸し、氷中で固まらせる。ただちに組織の薄切装置で400μmの網膜切片を作成する。10mMのfluo-3を含むグルコース含有リンガー液に切片を30分間浸し、さらに30分間グルコース含有リンガー液にてfluo-3を洗う。灌流装置に切片を固定し、95%O_2/5%CO_2飽和グルコース含有リンガー液中で安定した後、95%N_2/5%CO_2飽和マニトール含有リンガー液に交換し、細胞内カルシウムの濃度を測定するためにメリディアン社製の共焦点レーザー顕微鏡で画像を取り込んだ。励起波長は506nmで螢光波長は526nmを使用した。 結果:網膜内層では、95%N_2/5%CO_2飽和マニトール含有リンガー液に交換するとすぐに細胞内カルシウム濃度は上昇した。5分後にプラトーに達し、さらに5分ほどすると再びカルシウム濃度は上昇していった。95%N_2/5%CO_2飽和マニトール含有リンガー液にしてから5分以内に95%O_2/5%CO_2飽和グルコース含有リンガー液中に戻すと元に戻るが、10分以上経つと戻りにくかった。網膜外層では、基本的には網膜内層と似た応答をするが、上昇と戻りのカーブがゆっくりとしていた。 結論:網膜スライスで虚血モデルを再現することが出来、細胞内カルシウムの応答を調べることが出来たが、組織の作製方法や螢光色素の選択などでまださらに検討を要すると考えられた。
|