研究概要 |
Vogt-Koyanagi-Harada(VKH)病は色素細胞に対する自己免疫疾患とされているが、免疫反応の対象となっている抗原については未だ解明されていない。当該年度の科学研究費で、色素細胞の不溶性成分について解析することにした。本報告ではこの中でも、すでにそのcDNAの全長がcloningされているTRP1,TRP2,Tyrosinaseについて解析した結果を述べる。 TRP1,TRP2,trrosinaseのcDNAをbacuro virus-insect cellの発現系に組み込み、蛋白質を発現させた。発現している蛋白質は細胞の全蛋白質量の約1%程度と推察された。 これらの蛋白質を発現している細胞をフロインド完全アジュバントと共にルイスラットに注射し、実験的自己免疫性葡萄膜炎が惹起されるか否かについて検討した。細隙灯顕微鏡による臨床的な観察では、1X10^7個/ラットの細胞を注射後、12日目から炎症が生じ、28日目まで持続した。組織学的な所見では前房、後房、硝子体に炎症性細胞が浸潤し、虹彩後癒着を招来しているものもあった。虹彩、毛様体は腫脹し、炎症性細胞が浸潤していた。後眼部では網膜色素上皮に類上皮様の細胞が重層している所見が散見された。しかしながら網膜は脈絡膜での強い炎症が波及したと思われる部位以外は病変が無く、実際の葡萄膜炎のモデルにより近いものと思われた。皮膚、毛根、髄膜、内耳等の所見については現在検討中である。 Tyrosinase familyによって惹起される実験的自己免疫性葡萄膜炎はVKH病のモデルとなりうる可能性があると考えられ、現在も検討中である。
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