研究概要 |
1.有色家兎を用いた基礒的研究では角膜上に載せたガラス円筒内にプロスタグランジンE_2(PGE_2)溶液の600mulを一定時間だけ接触させる経角膜的な投与によって一過性の実験的ぶどう膜炎を惹起する方法を用いた.炎症惹起前に予め一定期間だけ漢方薬を投与し,この炎症反応に対する抑制効果があるか否かを平成8年度には検討できなかった漢方薬について調べた結果,以下のような成績が得られた。 眼内炎症を惹起する1週間前から漢方薬(黄連解湯)を動物の一日の摂取量がヒト臨床における一日量の5倍以上となるように飼料に混合して有色家兎に与え,経角膜的PGE_2投与で惹起した実験的ぶどう膜炎における前房内蛋白質濃度を眼内炎症の指標にして経時的に測定したが,有意な抑制効果は示さなかった。(p>0.05,n=10) 2.眼内炎症の惹起法が1.とは異なる実験系で,有色家兎にlipopolysaccharide(LPS)の全身投与を行って一過性の実験的ぶどう膜炎を作成する方法を用いた.炎症惹起前に,予め一定期間(1週間)だけ漢方薬を投与し,この炎症反応に対する抑制効果の有無を調べた結果,以下のような成績が得られた。 (1)葛根湯については,平成8年度にヒト臨床投与量の5倍量投与群が非投与群に対して有意な抑制効果が得られていた(p<0.05,n=4)処であるが,平成9年度に実験数を追加して統計処理を行った結果,両群に有意な差は見られなかった.(p>0.05,n=10) (2)柴苓湯についてはヒト臨床投与量の10倍量投与群および3倍量投与群は,1倍量投与群ならびに非投与群に対してそれぞれ有意な抑制を示した.(p<0.05,n=10) 3.ヒト臨床における眼内炎を対象に漢方薬による抑制効果の検討を行い,症例数はまだ十分には得られていないが,了解の得られた白内障術後の患者の眼内炎症に対する柴苓湯(TJ-114,ツムラ)投与群を非投与群と比較した結果,柴苓湯投与群で眼内炎症が抑制される傾向を示している。
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