(1)平成8年度における研究から、幼若な正常マウス網膜を網膜変性マウスに移植する際に、免疫抑制剤を使用しなくても拒絶反応が出現せず、移植後長期間にわたり、移植細胞が生着することが判明した。しかしながら移植した神経網膜が正常な極性をもって分化することはその確率がきわめて低く、網膜移植手術の手技に改良が必要であることが判明したため、今年度は移植細胞の分離方法や、移植片の大きさを変えるなどの様々な試みを行ったが、結果に改善は見られず、恒常的に移植細胞の極性を制御することは困難であった。また多くの移植細胞が網膜内などでロゼットを形成し、この制御もやはり困難であった。このため、当初予定していた高次ニューロンとの結合状態等を調べる形態学的研究や、電気生理学的研究は今後の課題となった。 (2)網膜変性マウスの電気生理学的研究を行うにあったての比較資料とするため、ヒトにおける各種網膜疾患(先天性停止性夜盲症、糖尿病網膜症、高度近視、小口病)の臨床例を対象に、網膜電図を用いて電気生理学的研究を行い、多くの新知見を得、それらの結果を論文として発表した。
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