生後3、7、12、24週齢ラットに対しガラクトースをそれぞれ15、25、50%で含有する異なる含有濃度食餌を投与し、白内障を発症させ組織学的観察を行った。その結果、生後週令の早いものほどそしてガラクトース含有濃度の高いほど、発症までの時期と進行程度は早くかつ強かった。る。つまり、発症は幼若ラットの高濃度群が最も強く、老齢ラットの低濃度群が最も弱い事が分かった。それぞれの群におけるラットの水晶体嚢のついた上皮細胞層を経時的に採取した。固定はメタノールにて行い、DAPI染色にて上皮細胞のDNAを螢光染色し螢光顕微測光法により定量した。また、半数の上皮細胞は抗PCNA(Proliferative Cell Nuclear Antigen)抗体を用いた酵素抗体法により水晶体上皮細胞を染色した。その結果次のような事実が分かった。白内障つまり線維膨化が開始する少し前の時期から抗PCNA陽性細胞が主として前嚢中央部に出現する。線維膨化は前述の様に生後週令と投与ガラクトース濃度に関連するので、陽性細胞出現は線維膨化と直接関連していることが判明した。従って、上皮細胞増殖の引き金となる刺激は細胞間の物理的圧迫の低下ではないかと推測した。しかし、いずれの場合でもその後の水晶体線維膨化の増加があるにもかかわらず陽性細胞出現は一過性であったことから、この刺激はその初期に最も強いことが示唆された。上皮細胞のDNA量2倍体細胞は抗PCNA陽性細胞の出現と同時期そして同部位に認められたことから、上皮細胞が確かに増殖していることが確認できた。2倍体細胞の細胞数のピークも線維膨化の出現とほぼ同じ時期であり、その後白内障進展にもかかわらず細胞数は漸減した。
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