研究概要 |
生後6週齢ラットに対しガラクトースを5、10、15、25%の濃度で含有する食餌によってそれぞれ飼育し、発症する白内障の組織学的観察と同時に上皮細胞の増殖細胞を標識し、増殖状態を観察した。そしてお互いがどの様な関係にあるかを調べた。方法は、それぞれの群におけるラットの水晶体嚢のついた上皮細胞層を経時的に採取し、固定はメタノールにて行い,DAPI染色にて上皮細胞のDNAを螢光染色し螢光顕微測光法により定量した。また、半数の上皮細胞は抗PCNA(Proliferative Cell Nuclear Antigen)抗体を用いた酵素抗体法により水晶体上皮細胞を染色した。形態学的観察では型通り、試料を作成し、メタクリル樹脂に水晶体を包埋し薄切切片を作成し光顕的に観察した。その結果、白内障発症はガラクトース含有濃度の高いほど、発症までの時期が早くそして進行程度は強いと言うことが分かった。そして、白内障つまり繊維膨化が開始する少し前の時期から抗PCNA陽性細胞が主として前嚢中央部に出現した。また、螢光測光法による2倍体細胞数も陽性細胞の出現と同時期であり、出現数も比例し、ピークも繊維膨化の出現とほぼ同じ時期であり、その後白内障進展にもかかわらず細胞数は漸減した。線維膨化は前述の様に投与ガラクトース濃度に関連するので、陽性細胞出現は繊維膨化と直接関連していることが判明した。従って、上皮細胞増殖の引き金となる刺激は細胞間の物理的圧迫の低下ではないかと推測した。しかし、いずれの場合でもその後の水晶体線維膨化の増加があるにもかかわらずむしろ減少し、陽性細胞出現は一過性であったことから、この刺激はその初期に最も強いと考えた。さらに、上皮細胞のDNA量2培体細胞は抗PCNA陽性細胞の出現と同部位に認められたことから、上皮細胞が確かに増殖していることが確認できた。飼育するガラクトース食餌濃度で比較すると、低いものほどPCNA陽性細胞出現は遅くなった。
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