本研究では長波長中波長錐体網膜電図(LM-cone ERG)と短波長錐体網膜電図(S-cone ERG)の発達と老化について分析し、網膜疾患に応用した。LM-cone ERG、S-cone ERGともに発達と老化に伴い、振幅と潜時が変化した。発達ではLM-cone ERGのd-waveのみが早期に成長し、他の成分は遅れて成長する傾向があった。光のonに対する細胞膜の分極特性とoffに対する特性の発達が異なる可能性が示唆された。老化ではLM-cone ERGのa-waveの加齢に伴う減弱がb-waveに対するそれより、早くb/a比の増加がみられた。これはoff双極細胞の脆弱性をしめす所見と思われた。S-cone ERGの発達はLM-cone ERGのそれより遅く、その老化は早い傾向があった。青錐体系の脆弱性には青錐体や双極細胞の関与があると思われた。臨床疾患では先天性停止性夜盲(CSNB)のみならず、Fishmanの報告した片眼性夜盲などの新しい疾患を検討した。CSNBではすべてのon双極細胞が機能不全をおこしLM-cone ERGのb-waveが減弱し、S-cone ERGも消失する。片眼性夜盲でもLM-cone ERGのb-waveが減弱し、on双極細胞の機能不全が疑われるが、S-cone ERGは正常に近く、CSNBとは異なった特性を持つことが分かった。
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