研究概要 |
白血球動態の観察 角膜へ切開,角膜上皮剥離,光学的角膜切除を行った後,経時的に,角膜輪部,角膜受傷部位の多核白血球の浸潤につき,組織学的に検討した。各処置とも30分後より既に輪部および結膜血管を介し,テノン襄および,結膜下に多核白血球の浸潤を認めた。さらに1時間後,3時間後には結膜上皮を通じ,涙液中への浸潤を認めた。これら涙液中に浸潤した多核白血球は,角膜受傷部に遊走し,涙液中のフィブリンとともに,受傷部を覆っていた。これらの多核白血球の浸潤は,6時間から12時間をピークに経時的に増強していた。一部の多核白血球は実質内に浸潤し,細胞死に陥った角膜実質細胞の浅さを貧食していることが認められた。一方,3時間後には,受傷部位の角膜上皮は進展を開始し,欠損部位を単層の角膜上皮で被覆しはじめていた。 6時間から12時間にかけてさらに,角膜上皮は進展し,受傷部位の大半は再被覆されていた。再被覆下の多核白血球の一部は角膜実質細胞を貧食した後,自己融解を認めた。 電子顕微鏡的に,これらの多核白血球は角結膜輪部血管壁より浸潤することが認められた。さらにこれらの多核白血球は結膜上皮間を通じて,涙液中に浸潤することが認められた。 従って,角膜受傷部に浸潤する多核白血球は,輪部血管より,涙液を介し,浸潤したものと推測された。
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