ヘパリン結合性成長因子として、ミッドカイン(MK)とプレイオトロフィン(PTN)が知られている。MKは神経栄養因子であるため、L細胞由来のマウスMKを硝子体注入したところ、白色ラット連続光照射性網膜変性が遅延した。今回は、大量のMKを得るためにbaculovirusや酵母を利用して得られたマウスMK、ヒトMK、ならびにヒトPTNの変性遅延効果を、光照射網膜変性において検討した。因子として、L細胞マウスMK、baculoviruマウスMK、酵母ヒトMKならびに酵母ヒトPTNを用いた。Sprague Dawleyラットの硝子体に、因子を左眼に、PBSを右眼に1μl注入した。注入2日後より7日間連続光照射した後に、眼球を得、光学顕微鏡により観察した。網膜変性に対する効果を定量的に評価するために、外顆粒層の厚さを測定した。光照射により視細胞内節・外節は消失し、外顆粒層は2〜3層と減少した。L細胞マウスMK、baculoviruマウスMK、酵母ヒトMK入眼では、PBS注入眼に比較して視細胞変性は遅延した。その効果の程度はL細胞マウスMK>baculoviruマウスMK>酵母ヒトMK順番であった。一方、酵母ヒトPTNは、光照射視細胞変性において遅延効果を示さなかった。 また、白内障、緑内障、網膜剥離、糖尿病網膜症などの眼疾患患者の前房水のMKを採取し、その濃度を検索中である。
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