これまでの我々の研究により上丘吻側領域が焦点調節に関与し、また輻湊や固視の保持にも関与する可能性が明らかになりつつある。 今回の研究では、異なる二種の蛍光色素をpretectal area内の調節関連領域(nucleus of the optic tractおよびposterior pretectal nucleus)とthe raphe interpositus内のomnipause neuron areaに注入し、逆行性に染色された上丘神経細胞を観察した。両方の色素で二重に染色された細胞の出現頻度は、上丘吻側領域で最も高く、上丘吻側領域の逆行性に染色された神経細胞のうち、約60%の細胞がpretectal area内の調節関連領域とthe raphe interpositus内のomnipause neuron areaの両方に軸索を伸ばしていた。このとこは、上丘吻側領域の神経細胞が焦点調節と固視の保持の両方に関与し、両者の機能的連携に関与する可能性を示唆している。 さらに慢性覚醒ネコを用いた微小電気刺激実験では上丘吻側領域の刺激により輻湊運動様の左右で方向の異なるslow eye movementが得られた。その低閾値領域は、先に我々が明らかにした調節関連領域に一致していた。 以上の結果から上丘吻側領域は、焦点調節、輻湊運動および固視の制御に関連した機能を持ち、これらの機能を近見反応というかたちで統合することに関与しているものと思われる。
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