新しい免疫抑制薬CAM(EtylO-N-(p-calboxyphenyl-calbampyl)-mycophenolate)はMycophenolic acid(MPA)の誘導体であり、プリン合成系のGMP合成を阻止する事により細胞増殖を抑制する。今回、CAMが不溶性のためCAMの活性体であるMPA点眼薬を作製し、Interphotorecepter retinoid-binding protein(光受容体間レチノイド蛋白;IRBP)により惹起される実験的自己免疫性ぶどう膜網膜炎(以下EAU)の抑制効果を検討した。MPAの点眼濃度を0.1%、1%、5%、10%とし、IRBP免疫後翌日より19日まで1日3回の投与を行った。濃度に依存したEAU抑制効果がみられ、10%では完全な抑制を示したが局所における副作用を呈した事を考慮し、5%を至適濃度に設定した。家兎を用いた5%MPA点眼液の眼内移行動態の検索の結果、前房水では最終点眼後1時間後まで、虹彩毛様体、脈絡膜では30分後まではMPAの有効血中濃度である5mg以上を検出した。IRBP30μgを接種したラットEAUモデルに免疫後1日目から5%MPAを点眼した群ではEAU発症が完全に抑制された。IRBP接種量を50μgに増量した強いEAUモデルでも、発症の遅延、炎症の軽症化がみられたが、このモデルのリンパ節細胞を用いたリンパ球増殖試験ではMPA投与による増殖抑制は認められなかった。従って、MPA点眼は全身の免疫応答に影響を与えず局所で作用してEAUの発症を抑制すると考えられた。
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