本研究は、涙腺破壊を生じたシェーグレン症候群を含む重症ドライアイの治療に対する涙腺移植術の可能性を知る上での基礎実験であり、移植片の自己組織内での生着、機能の観察および手術手技の確立を目標として行った。しかしながら本年度もマウスおよびラットにおける実験動物における移植片の自己組織内での生着手術手技が確立できず、移植涙腺の状態、機能評価は施行できなかった。またマウス、ラットでの非常に少量な涙液中の蛋白質濃度の測定に対しEISA法による解析と特殊スポンジによる涙液採取とその評価法も涙液内分泌型IgAを用い検討を始めたが、評価法の確立にはいたらなかった。 涙腺機能評価のための涙液、涙腺内蛋白の存在の確認実験においては、涙液内lactoferrin濃度測定を、同抗体を用いたラクトプレート(JDC社製)により測定し、涙腺内での涙腺機能蛋白の存在と分泌涙液中の涙液蛋白の関係を評価することができた。従来より知られていたように、涙液lactoferrin量は重症ドライアイであるシェーグレン症候群において明らかな減少を認め、ドライアイにおける涙腺機能評価に適していることが再確認された。一方、涙腺内ではこのlactoferrin蛋白の合成はシェーグレン症候群涙腺内においても残存する腺房および導管上皮細胞内に高濃度に存在し、ある種の分泌障害が生じている可能性が示唆され、シェーグレン症候群における重症ドライアイにおける涙腺の機能評価の蛋白として、合成、分泌といった涙腺上皮細胞内における、さらに詳細な機能異常を評価できる可能性が示された。
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