本来無血管組織である角膜にGermuthらの方法により(J Exp Med 1962)強制的にIII型アレルギー(Arthus反応)に伴う血管新生を惹起させ、炎症の終息過程での新生血管の消退とアポトーシスとの関係について検討を行った。 BSAを免役したウサギの角膜に同抗原を感作し実験を行った。感作後3日目頃より毛細血管の新生が始まり、9日目には免疫沈降輪に向かって延びる密な新生血管が観察された。その後、血管網は角膜中央部まで進展したが、これに伴い角膜輪部側から次第に血管網は著しく疎になった。その後20日目頃には炎症の鎮静化が認められ血管も数本残存するのみとなった。3'-end labelling法および電顕的な観察により、毛細血管に伴う血管内皮細胞のアポトーシス像が認められた。観察部位は毛細血管の増生している部位に接する輪部側に最も多く認められた。アポトーシス像は、血管内皮細胞ばかりでなく、遊走した好中球やプラズマ細胞にも認められ炎症の消退にもアポトーシスが関与している事が示唆された。各時期の角膜よりDNAを抽出し電気泳動を行ったが、明かなラダーは認められず、アポトーシスは、炎症細胞を含め徐々に起こっていることが示唆された。マイトマイシンC、シクロヘキサミド等の一部の細胞にアポトーシスを誘導することが知られている物質の影響について点眼投与について検討を行ったが、内皮細胞に関し統計的に有意な差は認められなかった。また、血管新生抑制因子の一つであるTGF-βの点眼投与でもアポトーシス発現に有意な差は認められなかった。これらの実験方法については使用する物質を含め検討の余地があると思われ、今後引き続き研究を行う予定である。 in vivoにおいて血管内皮細胞とプラズマ細胞に関して、明かな形態的所見を示した論文はほとんどなく、本研究によるものが始めてと思われる。
|