眼内新生血管発生における増殖因子・制御因子の分子生物学的研究とその治療

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08672043
• 研究機関: 関西医科大学
• 研究代表者: 緒方 奈保子 関西医科大学, 医学部, 講師 (60204062)
• 研究分担者: 松島 正史 関西医科大学, 医学部, 講師 (00192336) ; 西村 哲哉 関西医科大学, 医学部, 助教授 (30156111)
• キーワード: 脈絡膜新生血管 / HVJ-リポソーム法 / VEGF / TGFβ / bFGF / 一過性虚血網膜 / midkine / 網膜静脈閉塞症

研究概要

1.ラット眼底に強いレーザー凝固を行い、実験的脈絡膜新生血管発生モデルを作成した。
2.in situ hybridization法、transforming growth factor(TGF)β受容体I,II mRNAの発現を検討した。光凝固後、新生血管及びその周囲の細胞にmRNAの発現が見られた。TGFβ mRNAが、新生血管の成長過程で発現することを既に報告しており、TGFβが脈絡膜血管新生の過程でautocrine的およびparacrine的に作用することがわかった。
3.上述モデルに血管内皮増殖阻害剤(インターフェロン、テコガラン,TNP-470)を投与し、その血管新生抑性効果を調べた。薬剤投与群では新生血管の線維化が早期より認められ、退職が促進された。この結果は、臨床治療への発展に大きく寄与するものである。
4.上述モデルにHVJ-リポソーム法で眼内に遺伝子導入を行った。HVJ-リポソームを硝子体注入すると、光凝固部に特異的に遺伝子が導入された。遺伝子は、導入後約4週まで発現していた。さらに、HVJ-リポソーム法でvascular endothelial growth factor(VEGF)アンチセンスオリゴを導入することに成功し、遺伝子治療の可能性を示した。
5.培養網膜色素上皮細胞にbasic fibroblast growth factor(bFGF)およびそのantisense遺伝子を導入できた。遺伝子導入した網膜色素上皮細胞を眼内へ移植し、疾患の発生、進展を制御できる可能性が示された。
6.実験的網膜静脈閉塞症モデルにおいて、虚血部の網膜にbFGFおよびその受容体が発現していることを明らかにした。
7.ラット高眼圧一過性虚血再潅流モデルにおいてmidkine、bFGFとその受容体、VEGFおよび受容体(KDR)の網膜における発現を検討した。再潅流後、midkine,VEGF、KDRの発現が変化しており、網膜虚血とこれらサイトカインの関与が明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] Yi XJ, Ogata N, et al.: "Vascular endothelial growth factor expression in choroidal neovascularization in rats." Graefe's Arch Clin Exp Ophthalmology. 235. 313-319 (1997)
• [文献書誌] 松島正史、緒方奈保子, 他: "実験的網膜静脈閉塞症における塩基性線維芽細胞増殖因子と塩基性線維芽細胞増殖因子レセプター1の発現" 日本眼科学会雑誌. 101. 564-570 (1997)
• [文献書誌] 高橋寛二,緒方奈保子, 他: "脈絡膜血管新生へのサイトカインの関与とその抑制" 厚生省特定疾患網膜、視神経萎縮症調査研究班 報告書. 73-87 (1997)
• [文献書誌] Miyashiro M, Ogata N. et al.: "Midkine expression in transient retinal ischemia in the rat." Current Eye Research. 17. 9-13 (1998)
• [文献書誌] Yamamoto C, Ogata N, et al.: "Immunolocalization of transforming growth factor-β during wound repair in the rat retina after laser photocoagulation." Graefe's Arch Clin Exp Ophthalmolgy. 236(in press). (1998)
• [文献書誌] Miyashiro M, Ogata N. et al.: "Basic fibroblast growth factor and its receptor expression in transient retinal ischemia in the rat." Graefe's Arch Clin Exp Ophthalmolgy. 236(in press). (1998)