視能矯正の初期は、小児の弱視や斜視の視能訓練が中心であったが早期発見による予防、治療の進歩でそのニーズは変化した。現在では、中・高齢者の脳血管障害、生活習慣病、頭部外傷、ストレス性疾患等による二次的視機能障害の視能訓練が増加してきた。しかも、社会的背景は、少子・高齢社会が進み、疾病構造や病気の管理概念が多面化して、時代に対応した視能矯正が望まれている。 本研究は、新しい視能訓練学を構築するにあたり、その中核に眼球運動障害(眼位異常や融像の異常など)の視能訓練を位置づけ、正常化させるプログラムを展開させた。眼位異常や融像の異常は、画一的な治療では治癒が得られない。そこで良好な治癒が得られた先天性または後天性例の特性を分析し解決の糸口とした。先天性疾患では、視能訓練により融像が獲得できた乳児内斜視の特性から視能矯正プログラムを作成した。即ち斜視手術前に6か月以上の交代遮閉を施行し、運動面の改善から感覚性の正常化を促す方法である。一方、後天性原因による眼球運動障害に対しては、外眼筋の相反神経支配と融像の異常程度の両面から視能矯正プログラムを考案し、症例に適用した。視能矯正プログラムの適応は、垂直・回旋偏位があれば、衝動性眼球運動訓練、輻湊訓練が第一選択であった。訓練により運動面の改善が得られるとFusion Lock Trainingの効果が顕著に認められた。大斜視角の動眼神経麻痺は外眼筋の相反神経支配の面からのプログラムが有効であった。また部分融像は、Fusion Lock Trainingの最適応であった。更に融像訓練のシミュレーションソフトプログラムを使用して、最適な訓練条件を検討した。その結果、視標移動速度は4°C/sec.以上で第一眼位で安定した融像が獲得できれば、良好な融像域・融像野を拡大させることが分かった。
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