ヒトレニンプロモーターとアデノウイルスE1A・E1Bの融合遺伝子を誘導したオスのC57BL6Jマウス1匹とwild typeのメスとの交配で、F_110匹中41匹(37%)の遺伝子導入マウスを得た。現在F_3まで飼育中であるが、遺伝子導入率はF_2が55/141(39%)、F_3が57/148(39%)と一定であった。これまで得られた計154匹の遺伝子導入マウスのうち、すでにオス10匹、メス22匹の32匹(21%)に神経原性腫瘍(PNTT)の発生が認められた。また、ヒルシュスプルング病様腸管拡張症が8匹、水腎・水尿管症が3匹に確認された。腸管拡張は生後間もなく認められたものではなく、狭小部腸管には壁内神経節細胞は認められ、ヒルシュスプルング病とは異なった病態であった。腫瘍は生後3週齢より出現し始め、発生部位は頭部、四肢、縦隔、腹腔内、後腹膜、骨盤と多彩であるが、交換神経幹、副腎からの明らかな発生はなく、むしろ皮下などの軟部組織から原発したと考えられるものが多かった。組織学的にはどの腫瘍もほぼ同一の組織型で、光顕像・電顕像とも、強く神経原性を示唆し、免疫組織型的検索では、PGP9.5、Leu7のみ陽性で、NSE、NF、S-100、tyrosine hydroxylase(TH)、glialfibrillary acidicprotein(GFAP)、MIC2、vimentin、desmin、myoglobinは陰性であり、非常に未熟な神経原性腫瘍(PNET)と診断された。腫瘍をヌードマウス皮下に移植したところ順調に増殖し、ほぼ2ケ月毎に継代を繰り返して現在に至っている。今後、ヌードマウス移植腫瘍を用い、導入遺伝子で活性化されると神経原性腫瘍の発生との関係を調べる予定である。
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