現在までに平均体重10.1kgの離乳直後の幼ブタ14頭を用い、新生児用高木式自動制御血液ポンプと膜面積0.5m^2の模型人工肺を接続した回路による、肝静脈-門脈バイパスによる生体内分離肝潅流を施行した。肝潅流量を10、20、30ml/min/kgの3群に分け4時間まで還流し、潅流開始直後、潅流後1時間から4時間まで各時間毎に肝と潅流血液を採取し、生化学的変化と、光顕と透過電顕による組織学的変化を調べた。その結果、生化学的には、各群とも肝逸脱酵素の上昇は軽度で、ATP、ADP、AMPから算出した肝のenergy chargeはほぼ正常に保たれた。光顕的には、10、20ml/min/kg群では4時間まで肝細胞索の形態は保たれ出血や鬱血の所見も認めず、グリソン域の血管の形態もほぼ正常であったが、30ml/min/kg群では鬱血所見を認めた。一方、電顕的には、20ml/min/kg群では4時間までは肝細胞の形態はほぼ正常であったが、時間が経過すると肝細胞のミトコンドリアと小胞体の膨化を認めた。これは、20ml/min/kg群では極く一部の肝細胞に限られたが、10ml/min/kg群では比較的多く認められ、肝細胞の一部が低酸素状態、即ち潅流血液で十分に栄養されない虚血状態にあると考えられた。また、半数以上の個体で肝細胞内のグリコーゲン顆粒が早期から減少したが、これはミトコンドリアと小胞体の膨化と相関せず、虚血によるものとは思われず、肝潅流中の代謝学的変化が関与していると思われた。30ml/min/kg群は、現在電顕所見を検討中である。 今後は、潅流液の組成を変え、また、肝代謝に関係するホルモンを添加することにより、潅流血液と肝組織がどの様に変化するかを検討する予定である。
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