平成8-9年の基礎的並びに臨床的検討により以下の研究成果を得た。 《基礎的検討》(実験方法:筋電図・誘発電位記録法) (1)研究細目、家兎を用いた適切な磁気刺激部位・条件の検討 磁気刺激装置:磁気刺激装置SMN-100、8の字型磁気コイルYM-111B(日本光電製) 筋電図記録:誘発電位・筋電型MEM4202(日本光電製) 結果:体重3kg前後の家兎15匹を用い磁気刺激による外肛門括約筋筋電図を試みた。頭部では、明瞭な反応が得られなかったが、胸椎以下の脊髄レベルでは明瞭な筋電図が再現性をもって記録できた。また、胸椎・腰椎部では単相性反応であったが、仙骨部では多相性反応と変化し、馬尾神経レベルでは闘値の異なる神経群により支配されているものと考えられた。 《臨床的検討》(実験方法:筋電図・誘発電位記録法) (1)研究細目.磁気刺激を用いた小児外科疾患における陰部神経機能の検討 結果:正常小児15例における検討では、腰椎以下の磁気刺激において再現性のある筋電図の導出が可能で、ヒトでは家兎より磁気刺激がかかりにくく、中枢神経の陰部神経への関与が異なるものと考えられた。また、潜時の測定には刺激ノイズの少ない腰椎刺激が適していた。 小児外科疾患における検討では、(1)鎖肛術前4症例において術前外肛門括約筋筋電図が記録が可能で、術前の評価だけでなく、従来不可能であった陰部神経や括約筋への手術侵襲の評価にも有用であった。また、術後12例において、従来より施行している経直腸壁陰部神経刺激法による外括筋筋電図との比較検討より、陰部神経障害部位の同定や術後評価に有用であった。(2)脊髄浸潤を示す悪性腫瘍2例と良性腫瘍1例では、脊髄磁気刺激による胸壁筋電図の導出も施工し、術前神経障害の評価と術後の回復過程を明らかにできた。 (2)研究細目.小児外科疾患の直腸肛門機能並びに骨盤・体性感覚神経機能研究 結果:H6年よりの継続課題の成果として、ヒルシュスプルング病や直腸肛門奇形症例の仙骨神経機能異常と術後排便機能障害との関連を研究し、陰部神経機能異常例では術後排便機能が不良であることを明らかにした。また、胆道閉鎖商術後胆汁排泄不良例では、ヒダミンE欠乏を伴わない体性感覚神経異常が出現し、肝移植により改善されうることを明らかにした。
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