研究概要 |
E1AFは、東野らにより1993年に報告されたets-oncogene familyに属する転写因子で(Higashino et al., Nucleic Acids Res., 1993)、約2.5kbの遺伝子によりコードされた481個のアミノ酸からなり、C末端側に85アミノ酸からなるETS domainを有してる。このE1AFのN末端側のn.n.402から761をRSVプロモーターの下流にアンチセンス方向に組み込んだアンチセンスE1AFmRNA発現ベクター(pRVSVΔF)を構築した。この発現ベクターを口腔扁平上皮がん由来細胞株HSC3にリポフェクション法で遺伝子導入した。HSC3細胞はE1AFおよびMMP1,9を強く発現し、浸潤性増殖を示すことを我々は既に報告している。遺伝子導入後、ネオマイシンでセレクションし、十数個のクローンを得た。 E1AFのcDNA (n. n. 196/760)をプローブにしたNorthern blottingによってE1AFアンチセンスmRNAが安定して発現しているクローン(HSC3-AS)を選択した。 Northern blottingの結果、HSC3-ASはparental HSC-3に比しMMP-1, -3, -9 mRNAの発現が低下しており、ゼラチンザイモグラムや免疫染色においてもHSC3-ASではMMP1、9ともにparental HSC3に比しシグナルが弱く、MMPタンパクの発現が低下していることが示された。 このような形質を示すE1AFアンチセンス遺伝子導入細胞HSC3-AS細胞の生物学的な湿潤動態の違いを明らかにするまえに、in vitro三次元培養(Raft culture)およびヌードマウス舌への注入を行い、生物学的性状の違いについて検討した。 Raft cultureでparental HSC3がゲルの中へ浸潤しているのに比べ、HSC3-ASはゲルの表面に重層しているに過ぎなかった。ヌードマウス舌においてはparental HSC3由来の腫瘍が索状に周囲に湿潤性に増殖しているのに対し,HSC3-AS由来の腫瘍は周囲と比較的境界明瞭で低湿潤型の増殖形式をとっていた。
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