研究概要 |
慢性胃炎,胃・十二指腸潰瘍は精神的ストレス等に誘引される文明病の一つであると考えられていたが,1983年WarrenとMarshallによってラセン状細菌と慢性胃炎との関係が報告されてから,これらの病気はHelicobacter pyloryが関与する細菌感染症の一つであることが明らかになった。 H.pyloriの正確な感染経路や感染源となる生息環境については未だに明らかでないが,1989年胃炎患者の胃粘膜と歯垢から本菌が検出されたことから,本菌の伝播経路のリザーバーとして歯垢が関与していること示唆された。口腔内からH.pyloriの検出が多々試みられているが,検出法の感度およびサンプルの異質性に起因するのか,未だに口腔内がnatural reservoirであるのかどうかは明らかでない。 本研究の目的は口腔内がH.pyloriのnatural reservoirであるのかどうかを明らかにすることである。H.pyloriの検出法には培養法と特異的ゲノムDNA増幅検出するPCR法(polymerase chain reaction method)があるが,本年度は,H.pyloriの16S rRNA,urease遺伝子の特異的塩基配列をプライマーとして,健康被験者の歯垢からPCR法を用いてH.pyloriの検出同定を行った。被験者40名の歯垢から両プライマーによる増副産物は検出されなかった。次年度はH.pylori等の基準株を使用して,PCR法における標的遺伝子の種特異的領域とその増幅条件を検討し,確立された検出条件のもとで胃炎患者等の口腔内サンプル(唾液,歯垢,舌苔,歯肉溝腋)からH.pyloriの検出を試みる。
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