研究概要 |
培養歯根膜細胞を歯周組織欠損部に移植することによって、結合組織付着形成能を有する歯根膜由来細胞の露出根面への増殖を試み、同部に結合組織性新付着が形成されるかどうかを明らかにするための準備として,本年度は移植に用いる歯根膜由来細胞ならびに対照として用いる歯肉由来線維芽細胞や骨髄由来骨形成性培養細胞を大量に得るための培養法を主として検討した.その結果,これまで,ラットのような小動物における歯周組織欠損部に対する移植実験では,我々が確立している培養用プレートあるいはフラスコを用いた通常の平板培養法でも,十分な量の細胞を供給できることが明らかとなったが,コラーゲンミクロフェア-とスピナ-フラスコを用いた浮遊培養法ではより多くの細胞を得ることができ,また,同培養法で得られた細胞にも,形態学的特徴やアルカリフォスファターゼ活性などの機能発現が,平板培養法で培養された細胞と同程度に備わることが確認されたことから,将来大型動物を用いた実験系あるいはヒトの歯周欠損への培養細胞の応用を考える場合には,より多くの細胞が得られる浮遊培養法がまさると考えられた.次年度のラットを用いた動物実験系での検討には,平板培養ならびに浮遊培養の両方を応用したい. なお,本年度は平成9年度に計画する移植実験のための動物実験系を確立するとともに、培養細胞を移植した際に見られる治癒様式に関して予備的な観察を行う予定であったが,培養法の検討ならびに培養細胞の形態及び機能的な特徴付けに時間がかかり,未だ十分な検討が行えていない.次年度早々に実験系を確立し,平成9年度に予定している研究計画を完遂したい.
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