研究概要 |
新しい歯周組織再生療法の開発のための基礎研究として,結合組織性付着形成能を有する歯根膜由来細胞の露出根面への増殖を試み、同部に結合組織性新付着が形成されるかどうかを明らかにするため,本年度は動物間での細胞移植が可能な近交系ラット(Lewis rat)を実験モデルとして,上顎第一臼歯近心根近心面に3壁性の欠損を形成し,すでに平成8年度に確立した方法により培養した,歯根膜由来細胞ならびに対照としての歯肉由来線維芽細胞,骨髄由来骨形成性細胞を移植した.細胞移植に当たっては,細胞をクロットとして移植する方法,コラーゲンゲルに埋入して移植する方法など種々の移植法を検討した結果,いずれの移植法も移植細胞の取り扱いが簡単で組織欠損部に十分な細胞が留まり増殖するための移植法としては不十分で,移植法の確立は困難であったが,最終的に,コラーゲン膜に,1x106 cells/ml濃度の細胞を播種し,1週間付着増殖させた後,移植する方法が最も優れた方法として選択された.なお,コラーゲン膜にはテロペプチド部分を除去し抗原性のほとんど無いアテロコラーゲン膜を用い,培養1日前には,培養液中の血清の影響を可及的に排除するため,培養液を血清無しの培養液に交換した.各種細胞移植後,1および2ヵ月後に組織標本を作成し観察した結果,歯肉由来線維芽細胞移植群では骨再生はほとんどみられず,結合組織性新付着形成も明らかではなかったが,骨髄由来骨形成性細胞移植群では骨再生が,歯根膜由来細胞移植群では骨再生と結合組織新付着の両者が認められた. 以上の結果から,歯根膜由来細胞移植による新しい歯周組織再生療法の可能性が示され,今後の大型動物を用いた検討や前臨床的な基礎的裏付けが得られた.
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