Znフインガー型転写因子Egr-1発現阻止による破骨細胞様多核細胞(MNC)形成促進効果は、癌抑制遺伝子産物であるWT1の発現を特異的に阻止するWT1アンチセンス(AS)オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)の添加により完全に消失した。異なる領域に対して作成したいずれのWT1 AS ODNでも同様の効果が認められた。コントロール実験として用いたWT1センス(S)及びスクランブル(Scr)ODNには全く効果が認められなかった。しかしながら前破骨細胞(POC)形成系で認められた、Egr-1発現阻止によるPOC形成促進効果は、WT1 AS ODNを添加しても消失せず、多核化の過程に於てのみWT1が作用することが示唆された。なお破骨細胞分化に於けるWT1の発現はRT-PCR法を用いて確認することができた。 Egr-1の特異的発現阻害実験により、マクロファージ分化に必須であるEgr-1が破骨細胞の分化には逆に負の調節因子として作用するのであるが、多核化の過程に於ては、負の調節因子としてのEgr-1の作用を抑制する転写因子としてWT1が機能していることが強く示唆される結果を得た。破骨細胞/マクロファージ分化の振り分け過程や多核化の段階等、破骨細胞の分化がZincフインガー型の転写因子による分化調節を受けていることが推定された。現在、in situハイブリダイゼーション法を用いて骨組織に於けるZnフインガー型転写因子の発現を詳細に解析中である。本研究成果の一部は第38回歯科基礎医学会に於いて既に報告している。
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