この研究は当初は当教室で作製した抗アクチビンβ(A)モノクローナル抗体による組織検索を中心に行う予定であった。抗体の特異性はウエスタン・ブロツティング及びその局在もin situ ハイブリダイゼーションの報告と大きな差異がない事を確認した後平成8年度の解剖学会総会でこの抗体を用いた観察結果を一部発表した。 しかしその後この科学研究費の予算により購入した高感度のケミルネッセンス法により抗体の再検定をマウス卵巣及びアクチビンAを分泌するマウス・マクロファージ系の細胞P388D1の培養上清と細胞を用いてウエスタン・ブロツティングを行った所、通法では検出できなかった分子量70K付近にいくつかの非特異と思われるバンドが認められた。抗アクチビンβ(A)抗体についてはBilezikjian et al.(1993)及びFunaba et a1.(1996)は分子量55K〜65Kにバンドを認めたが、アクチビンAで吸収するとこれらのバンドが消失することなどから、アクチビンの抗体として報告しているが、このような抗体は組織化学的には使用できないと考えられる。 この研究の目的は発生におけるアクチビンAの関与(変化)を見ることであり、このためには特異性の高い抗体が必須である。またin situ ハイブリダイゼーションも行う予定であったが、あくまでこれは免疫組織化学による観察を補足するものであり、現時点ではn situのみで組織中の詳細な分布を検索するのは非常に困離である。そこで計画を新たな抗アクチビンβ(A)モノクローナル抗体作製に変更することにした(平成8年度研究実績報告書)。 現在までに精製したアクチビンAを用い免疫方法などを変えてin vivoで3回、in vitroで2回作製を試みたが何れもアクチビンAに反応するが非特異もある抗体しか得られていない。精製したアクチビンAを抗原として用いても良好な抗体が得られないと考えられるため、現在は変性を避けるためクロマトを用いずにP388D1の培養上清の限外濾過による濃縮粗精製物を抗原として抗体を作製中である。
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