研究概要 |
従来から、歯周病と唾液との関連について注目され、多くの研究成果が報告されてきた。しかし、これらの報告の多くは歯周病患者の唾液の分析にのみ注目を置き検討を加えてきた。その結果は、歯周病患者の唾液中には、免疫抗体であるIgA,IgG,IgM、酵素であるアミラーゼ、諸種のプロテアゼ、ペルオキシダーゼ、細菌凝集因子であるアグルチニン、および種々の金属イオン、などが対象とした者の唾液中よりも増加していることが報告されている。本研究の目的は、口腔内を正常な状態に保つ恒常性の維持のための唾液成分の量的バランス、あるいは恒常性の繊維に重要な役割を担う唾液生体防御因子などを検索し、その中で歯周病と関連の深い物質を検討し、それらの物質の唾液中への合成・分泌機構を解明することである。このことにより、歯周病の早期発見方法、予防方法を見いだし、終局的には遺伝との関連を検討することである。これまでの研究結果では、唾液蛋白の合成・分泌機構は細胞化学的に少なくとも2種の機構が認められた。この結果は国際組織化学シンポジュウムで報告した。一方、当大学の学生および若い研究者の唾液をSDS-PAGE電気泳動法により分析した結果、唾液成分中のある蛋白質の量によって2つのグループに分類されることが判明した。この蛋白質が極端に少ないか、あるいは欠落しているグループの者の口腔内の所見は、程度の差があるものの歯周病の所見が認められた。そこで、臨床医の協力をへて歯周組織検査およびX-線検査により、比較的若年者で歯周病と診断された患者の唾液を採取し、電気泳動法により分析した。その結果、これらの歯周病患者の唾液試料の多くには上記の蛋白質の量が極端に減少しているか欠落していることが認められた。この蛋白質の同定にはさらに時間を必要とするが、歯周病の発症に重要な関連を有しているものと推察された。
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