研究概要 |
ホ乳動物の味蕾は,数種類の細胞型から構成されるが,それぞれの細胞型がどのようにして分化してくるのか,さらにはその機能的役割については,まだよく理解されていない.これらの事を明らかにするため,本研究ではよく発達した味蕾ももつウサギを用いて,その形態や発生過程を免疫組織化学的ならびに微細構造的に検索した.胎生26日〜生後2日,および成熟したウサギの葉状乳頭を用いた.免疫組織化学的検索のため,抗サイトケラチン抗体(CK18,19,20)を用いて免疫染色した.ウサギの味蕾はI,II,III型細胞(Murrayの分類)と基底細胞から構成されていた.また,味蕾細胞はCK18,19,20による免疫染色に陽性で,周囲のケラチノサイトから区別された.胎生27日には,葉状乳頭上皮基底部に,比較的大きく明調な細胞が出現した.この細胞はCK20に免疫陽性で微細構造的には,細胞質内に直径80〜120nmの多数の有芯果粒が認められ,III型細胞,あるいはメルケル細胞に類似した特徴を示した.このような細胞は,神経線維が上皮に到達するのに先立って出現した.胎生28日頃になると,多数の神経線維をともなったシュワン様細胞が上皮基底膜を貫き,上皮内へ侵入した後II型細胞の特徴をもつ細胞へと分化した.I型細胞はIII,II型細胞におくれて,周囲のケラチノサイトから分化した.現在まで得られた結果は,味蕾細胞の発生に関して,多元説を強く支持するものであった.
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