研究概要 |
味蕾形成予定領域上皮と神経細胞との相互作用の詳細なメカニズムを解明するため,まずラットとウサギを用いて微細構造的ならびに免疫組織化学的に検索した.その結果,神経線維の上皮内侵入に先立って,味蕾形成予定領域上皮内に特殊な細胞が出現することが明らかになった.この細胞の基底側細胞質内には,直径80-100nmの有芯顆粒が存在し,しばしば基底膜を介して固有そうに向けて分泌するのが観察された.この細胞は,ウサギでは味細胞に分化した.この所見は,味蕾の初期形成には神経非依存的に出現する味蕾細胞前駆細胞の出現が重要であり,必ずしも神経線維は必要でないことを示唆するもので,従来の神経依存説に疑問を投げかけるものであると考えられた.現在このような味蕾細胞前駆細胞の出現前後において,味蕾形成予定領域舌上皮が示す神経細胞に対する栄養効果について検討中である.次に味蕾形成予定領域上皮および完成した味蕾の細胞生物的特性を解明するため,まず味蕾を上皮組織から分離する方法の確立を試みた.その結果,ウサギの葉状乳頭味蕾を分離する方法を確立することができた.分離した味蕾は微細構造的にも免疫組織化学的にも味細胞であることが確認された.現在分離した味蕾を用いて,その細胞生物学的特性について検討している.さらに味蕾細胞前駆細胞の出現前後における味蕾形成予定領域の舌上皮と神経細胞とのco-cultureの試みを検討中である.
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